痩せるためのダイエットに関する情報はたくさん存在する一方、痩せ体質で悩んでいる方が多いのも事実。
痩せていると、疲れやすい、体が冷える、風邪をひきやすいといった体の不調につながりやすく、さらに女性はホルモンバランスの乱れによって、月経不順や不妊などのリスクも上昇します。
ここでは痩せの原因や、健康的に太る(体重を増やす)ための食事のポイントなどをご紹介します。
どれくらいから痩せ型?BMIをチェックしよう
痩せているかの基準は、身長と体重の値から計算されるBMI(Body Mass Index)から判断することができます。BMIは以下の計算式で算出されます。
BMI = 体重(kg) ÷ { 身長(m) × 身長(m) }
BMIの標準範囲は18.5~25未満で、25以上は“肥満”、18.5未満は“痩せ”です。痩せ型の人が体重を増やしていく際には、BMIが標準範囲に入るよう心掛けていきましょう。
「痩せ」の原因と摂取エネルギーの目安
食べ物や飲み物から摂取するエネルギーと、身体の活動によって消費するエネルギーが釣り合っている状態では、体重は増減しません。
しかし、摂取するエネルギーが多くなると体重は増加していき、消費するエネルギーが多くなると体重は減少していきます。
痩せている、すぐに体重が落ちてしまう、あるいはなかなか体重を増やせないという方は、 【摂取エネルギー<消費エネルギー】 という状態が続いてしまっています。
では一体どれくらいの摂取エネルギーが必要なのでしょうか。
一般的な活動量の方が必要なエネルギーの目安としては、男性で「2600kcal程度」、女性で「2000kcal程度」です。
一日中家にいてほとんど活動しない日であっても、男性で2300kcal、女性で1700kcal程度のエネルギーはとる必要があります。
これらのことを踏まえると、痩せてしまう主な原因として次の2つが挙げられます。
① 食事によるエネルギーが足りていない
必要なエネルギーが食事からとれていないと、【摂取エネルギー<消費エネルギー】の状態になり、体重は減少していきます。
朝ごはんを抜きがち、休日には昼過ぎまで寝ている、ついつい食事を忘れる、ということがよくある方は、十分なエネルギーを補えていない可能性があります。
② 消化・吸収力が低い
十分なエネルギーを食事からとっていたとしても、消化や吸収がうまくされないと、体内ではエネルギー不足になります。
消化・吸収力が低い原因は、体質や遺伝による場合もありますが、消化吸収の役割を果たす腸内の環境が良くないことが原因かもしれません。
また、便秘や下痢がつらい時には、食欲も落ちてしまいがちなので、摂取エネルギーそのものも不足してしまいます。
健康的に体重を増やすための食事ポイント
それでは、健康的に体重を増やしていくために、日ごろの食事でどのようなことに注意したら良いのでしょうか。
いくつかのポイントを挙げてご紹介します。
① 十分なエネルギーをとる
痩せ型で悩んでいる方は、まずは現状よりも食べる量を増やしていく必要があります。
その際に重要なことは、
- 欠食をしない
- 補食(間食)を取り入れる
ということです。
欠食をしない
欠食については、特に朝食をとらない方が多いようです。朝は少し早く起きて、ゆっくりと食事ができるようにしましょう。朝食はご飯と卵料理、納豆といった手軽なもので構いません。
また、朝は食欲がない、食事が喉を通らないという方は、ヨーグルトやスープ、牛乳など、食べやすい・飲みやすいものを少しずつ取り入れることから始めてみてください。
休日のようにゆっくり睡眠時間が取れる日には、朝食や昼食が食べられない日もあると思います。そのような日は、起きている時間にいつも以上にエネルギーを補給することを意識しましょう。
補食(間食)を取り入れる
一度にたくさんの量を食べられない方は、補食(間食)を利用すると良いです。朝と昼の間、昼と夜の間などに軽食を取り入れれば、一日に摂取する総エネルギーを増やすことができます。
補食は、スナックやお菓子類ではなく、「炭水化物」と「たんぱく質」が両方摂れるよう、食品を組み合わせることを意識してみてください。
コンビニなどで手軽に買える炭水化物メインの食品としては、おにぎりやうどん、パン、バナナなど。
たんぱく質の例としては、ゆで卵や冷奴、チーズ、焼き鳥などがあります。間食にあまり多くは食べられないと思うので、無理のない範囲で大丈夫です。
② 体に必要な栄養素をとる
好き嫌いが激しい、偏食、あるいはお菓子類やインスタント食品が多いという食生活の方は、食事の栄養価が下がっています。
健康的に体重を増やしていくためには、エネルギーだけではなく、体に必要な栄養素も摂りながらエネルギーを増やしていく必要があります。特に、筋肉のもとになる「たんぱく質」や、代謝活動や体の機能維持に必要な「ビタミン・ミネラル類」を欠かさないことが重要です。
栄養価の高い食事にするためには、一食の中で、主食となるご飯や麺類に加え、「肉・魚・卵」を使ったおかずを組み合わせて、たんぱく質を補うことが大切。肉ばかり、魚ばかりでは栄養も偏ってしまうので、ローテーションしていくと良いでしょう。
ビタミン類は主に野菜や果物から摂ることができます。副菜としてサラダやお浸しなどを取り入れる、スープには野菜をたっぷり入れるなどの工夫をしてみてください。デザートには甘い菓子類も良いですが、代わりに果物を食べる、果物を使用したスイーツを選ぶといった方法でビタミン類が補給できますよ。
③ 消化・吸収しやすい食事を意識する
もともと消化や吸収の能力が低い方もそうではない方も、消化・吸収しやすい食事を意識することで、体に取り込まれるエネルギーや栄養素がアップします。
そのためには、次のようなことがポイントです。
- ゆっくりよく噛んで食べる
- 消化の良いものを選ぶ
- 消化酵素を含む食材を適宜取り入れる
まず大切なことは、ゆっくりよく噛むこと。それにより食品が消化されやすくなり、少し多く量を食べたとしても胃や腸の負担を抑えることができます。
次に、消化の良いものを食べる工夫をしてみましょう。かたい食べ物よりやわらかい食べ物のほうが消化されやすいため、お肉やお魚はやわらかく煮込んである料理が好ましいです。
また、油っこいものは消化されにくいので、消化吸収を高めるためには脂身の多いお肉ではなく、ささみや白身魚を選んでみてください。
消化のよい食べ物を選ぶこと以外にも、消化をサポートする方法があります。それは、消化酵素を含む食材を取り入れることです。
例えばダイコンや長芋には、ご飯や麺などの炭水化物に含まれるでんぷんを分解するアミラーゼが含まれています。パイナップルやキウイにはたんぱく質を分解するプロテアーゼが豊富です。
大根や長芋をすりおろしてうどんやご飯と合わせたり、お肉をたくさん食べた日のデザートにはパイナップル、キウイを選ぶなどの工夫で消化をサポートすることができます。
④ 腸内環境を整える
腸内環境を整えることは、消化や吸収の機能を維持するためだけでなく、便秘や下痢になるのを防ぎ、食欲が落ちないようにするためにも重要です。
私たちの腸内には約100兆個の腸内細菌が住み着いています。腸内細菌はその働きから善玉菌と悪玉菌に分かれており、善玉菌を増やし悪玉菌を減らしていくことが大切です。そのためには、次のことを意識してみましょう。
- 善玉菌として働く乳酸菌やビフィズス菌などを摂る
- 善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を摂る
乳酸菌やビフィズス菌は、ヨーグルトや納豆、キムチ、漬物などの発酵食品に多く含まれています。ヨーグルトや納豆を朝食に取り入れたり、ご飯にはキムチや漬物をのせるなど、日常的に発酵食品が摂れるよう工夫してみてください。
オリゴ糖は大豆に多く含まれているため、豆乳や豆腐などの大豆製品がおすすめです。食物繊維は野菜や海藻、ゴボウ・レンコンなどの根菜類に豊富に含まれています。
⑤ 食事と運動で筋量アップ
体重を増やしていく際には、脂肪だけでなく筋肉をつけていくことが大切です。筋量を増やしていくためには、食事と運動の両方がポイント。
食事では、筋肉のもとになるたんぱく質を積極的に摂ることが基本です。ただし、たんぱく質なら何でも良いわけではありません。筋肉を効率的に合成していくためには、たんぱく質の『質』を意識しましょう。
アミノ酸スコアが重要!
たんぱく質の『質』を表す指標として、“アミノ酸スコア”というものがあります。アミノ酸スコアとは、体内で合成できない9種類のアミノ酸がどれくらいバランスよく含まれているかを示しています。
アミノ酸スコアが高いものほど質の高いたんぱく質で、体内での利用効率も高まります。アミノ酸スコアが高い食品は「卵、鶏肉、豚肉、牛肉、鮭、アジ、イワシ、牛乳、ヨーグルト」などです。しかし、これらの食品だけ食べるのが良いわけではありません。
例えば、お米に不足しているアミノ酸「リシン」は、味噌汁に多く含まれているため、ご飯とお味噌汁を組み合わせて食べることによって、食事全体のアミノ酸スコアは向上します。
このように、さまざまな食品を組み合わせることによって、たんぱく質の『質』を高め、筋量アップにつなげていくことができます。
無酸素運動を取り入れる
運動に関しては、脂肪が燃焼されやすい有酸素運動よりも無酸素運動を取り入れると良いでしょう。筋トレなどの無酸素運動とたんぱく質が豊富な食事を組み合わせることで、効率的に筋肉がついていき、健康的に体重を増やすことができます。
【まとめ】健康的に太るために、食事の見直しから!
朝ごはんを抜きがちであったり、便秘・下痢気味だったりと、いくつか痩せている原因に当てはまるものがあったのではないでしょうか?
まずはご自身の食生活を振り返ってみて、改善するべき項目を見つけることから始めてください。ここでご紹介した食事のポイントを押さえながら、健康的な体を目指していきましょう。
執筆:廣野沙織(管理栄養士)/図・イラスト:FUKLA編集部